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コラム:再編議論避けられぬ日本のビール業界
August 9, 2017 / 5:57 AM / in 2 months

コラム:再編議論避けられぬ日本のビール業界

 8月7日、サッポロのほか、キリン、アサヒ、サントリーは最近、新興老舗を問わず、貪欲に海外ビール銘柄の買収を進めている。写真は都内で2014年7月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[ニューヨーク 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - コネチカット州の町の酒小売店で、6本パックのサッポロビールは、10.49ドル(約1168円)で売られている。もう1ドル出せば、同じく6本パックのアンカー・スチーム・ビールが買える。

一方の銘柄が、他方より10%高くなる理由を簡単に説明するのは難しい。2つの銘柄は、北海道とサンフランシスコでそれぞれ創立された由緒あるメーカーの製品で、両方とも米国内で生産されている。創業の年も近い。

ただ、アンカー・スチームがより高い価格を設定できるという事実が、サッポロホールディングス(2501.T)が8500万ドル(約95億円)を出してアンカー・ブリューイング・カンパニー(カリフォルニア州)を買収する理由を理解するカギになるかもしれない。

アンカー・スチームの価格設定の秘密は、マーケティングにある。米国の消費者は、いわゆるクラフトビールに付加価値を見いだしている。もっとも、同社の製品ついて言えば、クラフトビールと呼ぶのは誤りかもしれない。

アンカー・スチーム・ビールの起源は1871年にさかのぼる。ゴールドラッシュを目当てにドイツからやってきたゴットリーブ・ブレッケルが、サンフランシスコのロシアン・ヒル近くで開いたビールとビリヤードの酒場が起源だ。同じころ、ドイツでビール醸造を学んだ中川清兵衛が日本に帰国。明治政府の下、初の国産ビールの製造技術者として、北海道の醸造所の開業を監督した。

サッポロは一貫して事業に集中し、日本の4大ビールメーカーの一角となったが、アンカー・スチームの方は、1世紀ほど目立たない存在であり続けた。その後、ビール愛好者のフリッツ・メイタグが、曾祖父が家電販売事業で築いた資産を活用し、アンカー・スチームを一大人気銘柄に押し上げた。2010年にメイタグがビジネスを売却したときには、独立系醸造所はルネサンスともいうべき大ブームとなっていた。現在米国では、毎日2つの醸造所がオープンしている。

ただ、適切な株主還元を重視するなら、なぜ急速に飽和しつつある米国のビール業界に参入するのか、不可解な部分がある。

サッポロのほか、キリンビール(2503.T)、アサヒグループホールディングス(2502.T)、サントリー食品インターナショナル(2587.T)は最近、新興老舗を問わず、貪欲に銘柄の買収を進めている。

各社の株価は、安倍晋三首相の就任直後の2013年以降、市場一般を上回って推移している。だがその大部分は、低金利と円安が原因だろう。収益性に関していえば、4社は同業のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)(ABI.BR)やオランダのハイネケン(HEIN.AS)などに遠く及ばない。

日本のビールメーカーの海外買収攻勢は、ある目標を達成しているようにみえる。国内での業界再編の真剣な検討を遅らせるという目標だ。純粋を好む消費者には歓迎すべきことかもしれない。だが、安倍首相が掲げる経済改革の「3本の矢」の1つである、日本経済の効率化をはかるという観点からみれば、残念な状況というべきだ。

海外投資には、それなりの理屈がある。日本のビール事業は大量のキャッシュを生む。一方で、国内市場は縮小している。今後しばらく人口が減少し続けるという現実は、問題の一部でしかない。消費者の嗜好も変わり、いまビール消費量は過去最低水準となっている。2017年上半期のビール消費量は、前年同期比1.4%減少した。

この長期的な傾向は、各社に戦略の再検討を迫って然るべきだ。より小さな市場を前提とすれば、サッポロ、アサヒ、キリン、サントリーの各社は、コストを圧縮して競争力を維持する方法を見つけなければならない。それには、同様の傾向を経験した米国や欧州などの市場でそうだったように、国内で経営統合に向かうべきだろう。米国と欧州の市場はいま、ABインベブとハイネケンが牛耳っている。

日本のビール大手の直近の決算は、困難な状況をよく表している。サッポロの第2・四半期決算の売上高は3.2%増、営業利益率は3.1%だった。キリンの業績はさらに良く、売上高は9620億円、営業利益は800億円、営業利益率は8.3%だった。これは、キリンの製薬部門(そう、製薬部門が存在する)が部門の売り上げの15%を営業利益に貢献したからだ。

キリンの国内飲料事業の営業利益率は6%未満だった。全体の収益性は、ブラジルからの撤退効果で改善した。キリンは、2011年にブラジルのビールメーカー、スキンカリオールの買収に39億ドルを投じたが、今年それをハイネケンに7億ドルで売却した。

日本市場の3分の1のシェアを持つアサヒの営業利益率は10.7%、売上高は29%増加した。ABインベブからペローニなどの中東欧のビール事業を約1兆2000億円(約109億ドル)で買収したことを受けたものだ。ABインベブは、SABミラー買収の認可を得るため、これらの事業を売却した。

対照的に、バドワイザーやステラ・アルトワを生産しているABインベブの第2・四半期決算の利息・税金控除前の利益は44億ドルで、売上高は142億ドル。営業利益率は、アサヒの3倍近かった。世界最大のビールメーカーであるABインベブと比較するのはフェアでないというのなら、同族企業であるハイネケンが、売上高の17.2%を営業利益としている事実を考えてみるとよい。

日本の4社はみな、単独で、または力を合わせれば、もっと業績を上げられるはずだし、上げるべきだ。アサヒがサッポロを買収し、(それでもハイネケンに届かないが)合計の営業利益率が15%になることを想像してみよう。そうなれば、JPモルガンの2018年の売上予測をもとにすれば、両社合わせて15億ドルの売上高の上振れが期待できる。キリンとアサヒは、間違いなく7年前に中断した経営統合の協議を再開するだろう。

もちろん、日本は他と異なる。島国であり、国民は企業経営の効率や雇用の安定、金持ちの評価について、異なる考えを持っている。しかしその日本でも、政府がいかなる政策を取ろうとビールの消費量は減っている。

弱小のアンカー・スチームを買収したり、キリンのようにブルックリン・ブルワリー(ニューヨーク州)と資本業務提携を結んだりしても、それは変わらない。

巨大ビールメーカーの次の波は、すぐに日本を襲うだろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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