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コラム

コラム:止まらないグローバル化500年の潮流、弱体化は一時的

[ロンドン 23日 ロイター Breakingviews] - 昨今のグローバル化は健全には進んでいないように見える。世界の貿易は縮小し、国際協力への信頼感もしかりだ。米国と中国の2大経済大国の間では敵対的なナショナリズムが政治的に最も優先されている。しかし、世界が1つの経済、1つの文化に向かう大きな潮流は過去500年というもの、逆風に耐えて続いている。

 7月23日、昨今のグローバル化は健全には進んでいないように見えるが、世界が1つの経済、1つの文化に向かう大きな潮流は過去500年というもの、逆風に耐えて続いている。写真は復元された18世紀のフランス帆船。2018年4月、マルセーユで撮影(2020年 ロイター/Jean-Paul Pelissier)

オランダ経済政策分析局(CPB)の世界貿易モニターは分析に有用だ。同指数は2000年から金融危機の08年までに65%上昇。それから今年に新型コロナウイルス危機が始まるまでの12年間で上昇率は21%にとどまっていた。その上昇分も、新型コロナ関連の落ち込みで少なくとも一時的にかき消された。

最近の貿易の低迷は、経済成長の低調さに負うところが大きい。例えばユーロ圏からの月間輸出は2017年12月に天井を打っている。これに対し、政治はほとんど助けになっていない。国境を越える商取引には政治リーダーからの支援、あるいは少なくとも寛容さが求められるが、米トランプ政権の姿勢はずっと「敵対」だ。

貿易はグローバル化の成果であり、動力源でもある。財とサービスは資本、人々、知識、法律上の取り決め、技術上の基準とともに流れていく。こうしたものを正確に測定するのは無理だ。しかし、1つの信頼できる指標がある。国境を越える移民だ。移民の伸びは明らかに鈍化を見せている。

国連世界移民報告によると、1995年から2010年にかけて出身国以外で暮らす人口は世界全体の2.8%から3.4%に上昇した。その後は基本的に伸び悩み、19年が3.5%。新型コロナ関連の移動制限は少なくとも当面、移民数の減少要因になり得る。

こうしたことはいずれもグローバル化の支持者には意気消沈する出来事だ。しかし現在のグローバル化の鈍化は、もっと長い歴史的な観点で考察する必要がある。

より広範な文化や経済の統合の原動力は、近代社会の発展に深く根ざしてきた。現在の経済的普遍主義の土台は、究極的に言うと(コロンブスによる「新大陸発見」の)約500年前に築かれた。それは、多くの明確な政治的な国境が作られ、国境が封鎖されたり越境できたりするようになるかなり前のことだ。また欧州の大航海時代は、それ以前のいかなる軍事的勢力拡張よりも、貿易と和解と新しい思想をもたらした。

それ以来、グローバル化を目指す勢いは良くも悪くも増大してきた。グローバル化は、人々を長寿にし、より健康にし、教育機会も与えてきた。一方で、アフリカから米州への奴隷貿易や、南米で免疫のなかった先住民に天然痘を流行させて根絶やしにするなどの、いわば道徳的な惨事を招いたのもグローバル化のせいだ。

ただ、世界は今、多くの重要な面で実質的に一体化している。完全に、あるいはおおむね世界的に取り決められたり影響し合ったりするものを挙げてみよう。例えば通信や金融、ビジネス体系、ポピュラー音楽やファッションの流行、教育、科学的研究、交通システム、観光、エネルギー技術、軍事技術、さらには人口動態まである。

移民は現在、より規制されているが、これまで国や大陸間でビジネスや社会の関係深化をもたらすのに移民は十分な役割を果たしている。世界的な持続可能な開発目標もできた。起業家の大半は国内にとどまらず世界的な利益の流れを夢見る。現在の政治的ナショナリズムの流れさえ、ある意味では世界的な現象だ。

新型コロナの感染拡大は、グローバル化の両義性と現実を示す格好の事例だ。世界を簡単に旅行できることが今年初めの新型コロナ拡大をもたらした。しかし英オックスフォード大学のスネトラ・グプタ教授によると、世界的な人の移動がもたらすのはそれだけではない。新規のウイルスへの免疫抵抗力も、世界的に構築されている。だから1918年のスペイン風邪流行時に比べ、新型コロナの死者数ははるかに少ない。

スペイン風邪だけが20世紀のグローバル化にとって試練だったわけではない。2度の世界大戦があり、この間には世界大恐慌があり、第2次大戦後は植民地の独立があった。続いてソ連共産主義の経済圏と米国主導の民主主義的、資本主義的経済圏の分断があった。

こうした分断や中断は、何年かは貿易のグローバル化を退行させたが、思想や組織機関や技術の伝播は部分的にしか妨げられなかった。新たな疫病も、中国による多方面を不快にさせる台頭も、過去500年の長き潮流を反転させる効力は持ちそうにない。中国の習近平国家主席は、自分の物差しによるものではあるが、グローバル主義を誓っている。それに、中国企業には世界市場がどうしても必要だ。

むろん各国の政府は、世界的に主流な動きから抜けだそうと試みることができる。例えば独自の科学技術的スタンダードを設定するなどだ。日本では200年にわたって鎖国政策が取られ、これは1853年に黒船来航という軍事行動によって継続不可能になるまで続いた。

だが現在は、恐らく銃砲は必要ない。華為技術(ファーウェイ)のような中国企業は一部市場からは締め出されるかもしれないが、長期的に見れば、市民や思想的な指導者、企業関係者らは品質の劣る自国製品よりも、世界クラスの財やサービスを選好する。

現在、溝があることは否定できない。国境を越える貿易はあと数年、停滞する可能性がある。しかし、この間に国際会議を数多く開き、グローバル化の弱体化について議論することが十分できる。移動制限が続くなら、学者らはインターネットを介して、統合の劣化についての懸念を容易に共有できる。通信手段は世界的になっており、コストも下がっている。何より、専門家集団であれば皆、同じ専門用語を使って話すことになるからだ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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